さらば!
帰国の朝。
いつも通りに目が覚める。でも今日は日本へ向けて帰らなければいけないんだわっ。長いようであっという間の約1ヶ月。帰りたくない・・・・。
急に夢から覚めて現実世界に引き戻されるような感じで、とてもやりきれない。
朝食のビュッフェに向かう。荷物もすでに纏めてあるので、もうそれを持ってレストランへ降りる事にしよう。ピックアップのミニバスが来る時間まで後もう少しだし。
1階エントランスの左手にあるレストランで一人、最後の朝食を食べていると―――マジでっ!?昨夜のデレク登場。
デ「おはよう。」
い「お、おはよう。本当に来たんだ・・・。(汗)」
デ「当たり前じゃないか。」
い「朝食は?」
デ「一緒に食べるよ。」
といって朝食ビュッフェ料金を払って向いに座る。私は日本にいる時から朝食はパンと目玉焼き、コーヒーという組み合わせだが、彼は中国人らしくお粥を選んで食べている。
い「お粥、好きなの?」
デ「アジアン ブレックファストだよ。」
い「そっか。」
食べているうちに刻々と時間は過ぎていく。ああああああ、本当に私の旅が終わってしまうのね。
しばらくすると外にミニバンがつき、男性がホテルへ入ってきた。レセプションで何か聞いている。おそらく私のお迎えに違いないわ。
案の定その男性は私のほうへやってきて、『出発です』と言う。
い「出発するね。」
デ「空港まで送っていくよ。」
い「いいよー、そんなの。」
デ「だって、しばらく会えないじゃないか。」
い「(また会うつもりなのか?!)――そうだねぇ。」
私の大きな荷物を担いだデレクは一緒にミニバンに乗り込んできた。思えば最初にバンコクに降り立った時はこの重い荷物を自分で背負っていて、バンコクを旅立つ時はカズオさんが背負ってくれ、クアラルンプールを発つ時はデレクが背負ってくれて・・・やっぱり旅って不思議だ☆
ミニバンの中でデレクはかなり神妙な感じになっている。
デ「僕の家は中国でも香港に近い所にあるから、今度香港に来てくれたら会えるよ。」
い「もう、しばらく海外旅行はできないと思うんだけど・・・」
デ「チケットだったら僕が買って送ってあげるよ。」
い「はぁ!?」
デ「中国人は日本に行くのにヴィザとか手続きが大変だけど、日本人が中国に来るのは簡単なんでしょ。」
い「そうといえば、そうかなぁ。」
デ「ねえ、運命って、信じる?」
い「はぁ?」
デ「僕は今まで運命なんて信じた事無かったんだ。だけど、君に会って運命を感じたよ。」
い「――――(汗)。」
デ「僕がクアラルンプール到着したその日が、君にとってクアラルンプール最後の夜だったでしょ。そして、それがバレンタインデーだったんだよっ!」
い「・・・・・。」
デ「これは運命なんだよ。」
運命を語られてもねぇ。
そんなこんなで、いつの間にか空港行きバスが発着するバスステーションへ到着。ここからは大きなバスに乗り換えて空港へ向う。
い「ここからバスに乗るから。もう、ありがとう。」
デ「バスって、すぐに出発するの?」
い「いや、時間になって人が乗ったら出発するんでしょ、きっと。」
デ「タクシーの方が早いよ。」
い「タクシー高いし、もうバスの予約しちゃったし。」
デ「大丈夫、ここはバスかタクシーどちらかに乗れば何も言われないよ。」
い「そうなの〜〜??」
デ「お金払えば文句言われないんだから、心配しないで。」
周りを見てみるとバスが数台待っている隣にタクシーも沢山止まっていて、運転手達が暇そうに座っている。
そうだ、クアラルンプールに来た時乗せてくれた運転手さんは、電話で約束(?)した通りいるのかな・・・・あ、あそこに座っているのがそうかも!!
なんて考えているうちにデレクはさっさと近くに止まっているタクシーの運転手の方へ向い、値段交渉を始めている。素早いっ。
デ「空港までタクシーで行こう。乗って。」
い「だってバスが・・・」
デ「運転手さんに聞いたけど、大丈夫だよ。」
い「――そ、そうなの・・・。」
結局バスには乗らず、タクシーに乗りかえて空港へ向う事に。暇そうにしているほかの運転手達も何も言ってこないし、バスだろうがタクシーだろうがここから何かに乗って行けば問題なかったようだ。
空港へ到着すると、デレクはタクシーを待たせて私の荷物を持ってついて来た。
い「有難う。時間までもう少しあるけど一人で待っているから大丈夫。」
デ「日本に帰ったら必ずメールを送ってね。会社のアドレスでもいいから。」(←某大手中国通信会社勤務)
い「あ、あ〜。分かった。」
デ「じゃあ、僕はこれから仕事だからこれで・・・・本当にこれからも連絡取り合うんだよ。」
い「はいはい。」
デレクはそう言うとタクシーの方へ戻っていった。
デレクと別れるのが悲しい――ーというわけではないけど、彼の背中を見ると私の旅が去っていくようでとても切ない気分になってしまう。
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